明日を見通せない時代だから・・・

鉄道・スポーツ観戦・読書・音楽鑑賞をこよなく愛する、永遠の17歳

視線を上げると、島本駅を通過していた

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」 川端康成『雪国』の冒頭の一節を知る日本人は相当数いるはず。でも、村上春樹国境の南、太陽の西』を読み終えた瞬間に、視線を上げると、130km/hの高速運転で通過する新快速(223系2000番台)から、島本駅(JR京都線)の駅名標が目に飛び込んできた人は滅多にいないはず。先日、そんな経験をした。

 

 ここ数ヶ月、「1Q84」が文庫化されたこともあって、書店の文庫本コーナーは村上春樹色が強い。そんなこともあって、書店で見かけた『国境の南、太陽の西』を読み返してみようと思いたち、書棚から引っ張り出して、10年ぶりに再読してみた。

 主人公であるハジメと3人の女性にまつわるストーリーで、ハジメが最も強く惹かれた女性の名前が「島本さん」。ハジメの島本さんに対する様々な感情が物語のメインテーマ。

 

 10年前、男子目線で読む限り、こんなこともあるかな、と思ってた。全くの偶然だが、この小説を読み終えてほどなくして、人生初の入院をする機会が訪れた。ベッドに寝転び、病室の天井を見ながら、この小説について、あれこれと思いを巡らせた記憶がある。

 だけど、今読み返してみると、ハジメの心情に、どうも違和感を感じてしまう。昔日の恋に囚われることが美談として思えず、自意識過剰・うぬぼれとさえ感じてしまう。言い過ぎだろうか。

 ただ、ハジメの抱く心情のうち、「僕が抱えていた欠落は、どこまでいってもあいかわらず同じ欠落でしかなかった」という感覚はなんとなく理解(実感)できる気がする。永遠にこの感覚を持ち続けるんだろうな、って。

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)

 

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