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不思議な解釈だね

 27日(月)夜、海上保安庁尖閣諸島に上陸した活動家の様子を撮影・編集した映像を公開した。映像の中には、海上保安庁の巡視船に向けて、活動家がレンガを投げ込むシーンがある(下記映像17:30すぎ)。

 陸上で職務執行中の警察官に向けてレンガを投げつければ、実際にそのレンガが当たらなくても、職務妨害の蓋然性が高まったとして、公務執行妨害罪(刑法95条1項)が成立する。実務上・学説上、この解釈に異論はない。

 海上保安庁は海の警察。にもかかわらず、活動家に公務執行妨害罪を適用せず、日本政府は中国へ送り返した。明らかにダブルスタンダードな法解釈だ。

 

 「司法警察員は、第70条の罪に係る被疑者を逮捕し・・・た場合には、収容令書が発付され、且つ、その者が他に罪を犯した嫌疑のないときに限り、刑事訴訟法・・・第203条・・・の規定にかかわらず、書類及び証拠物とともに、当該被疑者を入国警備官に引き渡すことができる。」として、出入国管理及び難民認定法入管法)65条1項は刑事訴訟法203条(司法警察員の検察官送致に関する規定)の特例規定を設ける。入管法70条1項2号は「入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者」に罰則を科す。

 検察官による刑事事件としての手続きを踏めば、検察官が捜査を尽くすために設けられた逮捕・起訴前勾留の期間(原則23日間)、活動家を拘束することになる。速やかに活動家を中国へ送り返すためには、上記「他に罪」に当たる公務執行妨害罪を適用できない。今回、海上保安庁・沖縄県警が活動家を公務執行妨害罪での立件を見送った背景だ。

 

 本論考で、日本と中国の外交関係を議論するつもりはない。偏狭なナショナリズムを主張するつもりもない。法解釈という視点のみを問題にしてる。

 日本が中国に対して法治国家であると叫ぶなら、政府は粛々と既存の法規定を適用すべきだ。政治的判断を残すために活動家を本国へ送り返す特別な手続が必要なら、そのような規定を事前に設けておく必要がある。

 尖閣諸島に関して、これまでも繰り返し、同様の事例はあった。なんでも後手後手に回る政府の対応には、いつも呆れさせられる。野田首相は「厳正な対処」「毅然とした対応」とか述べる前に、ダブルスタンダードな解釈が法治国家とは相容れないことを認識すべきだ。

(全録)海上保安庁提供 尖閣諸島に香港活動家が上陸した際の映像

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