明日を見通せない時代だから・・・

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もっと前の時点からフォーカスして

 中央道笹子トンネルで起きた、トンネル崩落事件。トンネル内部の構造物が崩落して大惨事となったことは明らかだが、現時点で正確な事故原因は不明。もっとも、トンネルが供用開始されてから約35年が経ち、トンネルの老朽化も一因とされる。

 各種報道を見て、大きく気になることがある。トンネルが供用開始した年度からの経過年数に、スポットを当てている点だ。

 

 以前の記事でも指摘したが、供用開始の年度と工事完成の年度は異なる。たとえば、北陸新幹線の場合、供用開始時点で10年以上前に完成した高架橋が存在する。報道に倣って30年以上経過の構造物を老朽化とすると、北陸新幹線は開業約20年で老朽化構造物となる。

 北陸新幹線は2015年3月に金沢まで開業し、金沢–敦賀は2025年度末開業とされる。先日の記事でも書いた、福井駅付近では高架橋の橋脚部分が完成してる。開業まで約15年も棚晒しにされる。供用開始から老朽化まで、わずか約15年しかないことになる。

 供用開始まで長きにわたって、ダラダラと進む工事が原因だ。北陸新幹線に限らず、当初見込みから建設費が大幅に膨脹することも、様々な公共工事でよく見られる事象だ。建設会社に工事を発注するために、公共工事をやっているとしか言えない。必要な部分へ集中的に予算を投下し、いち早く投下資本を回収しようという姿勢があれば、このような状況は発生しない。

 公共工事の是非を議論する場合、作るか⁄作らないかの是非ばかりが議論されがちだが、工期の長短について、もっと議論されるべきだ。

 

 さらに、気になる点をもう1つ。高速道路の老朽化対策を、国の公共工事として早急に行うべきだ、という議論について。

 中央道を管理する中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)は国土交通省所管の特殊法人だが、あくまで民営化を前提として設立された会社だ。仮に、JR東海がまだ特殊法人だった頃に(→国鉄から事業移管後、国が段階的に株式を市場で売却し、現在のJR東海は完全な民間企業。)今回の事故と同様の事象が東海道新幹線で起きていたら、JR東海が本来行うべき補修工事に税金を支出すべきだろうか。世界一輸送密度の高い高速鉄道で、潤沢に利益を稼ぎ出せる東海道新幹線に、税金を投入すべきという議論はされないはずだ。

 中日本高速道路2012年3月期決算で68億円の純利益を稼ぎ出す東海道新幹線ほどの超優良資産ではないが、中央道・東名高速道路・名神高速道路(八日市IC以東)など、国土の大動脈を支える路線を抱える企業だ。補修工事の負担で経営状況が悪化するなら、高速道路料金を引き上げればよい。1企業が負担すべき事業費用を、公共工事として税金で填補すべきではない。

交通インフラとガバナンスの経済学 -- 空港・港湾・地方有料道路の財政分析

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