明日を見通せない時代だから・・・

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関心を抱かないことには

 2012年8月10日(金)、現役の大統領として初めて、李明博・韓国大統領が竹島を訪問した。日韓関係は大きな緊張関係を迎えている。

  過去100年以上にわたる日韓関係の歴史問題と合わせて、竹島問題は議論の対象にされる。竹島の島根県への編入(1905年閣議決定)を、韓国国内では日韓併合(1910年)のさきがけとする見解が根強く、日本による植民地支配と複雑に絡み合って議論されるからだ。

 以下では、竹島問題と歴史問題の是非については棚上げする。両問題を関連して議論すべきか、竹島問題の史実はいかなるものか、といった議論は膨大な検証資料を必要とする。特に、竹島問題の史実は国際司法裁判所で解決されるべきで、簡単に議論できる問題でない。

 

 今回の訪問は領土問題を解決する上での政策カードというより、レームダック化の進む李明博大統領が政権浮揚を図ろうしたことに重点があるのは明らかだ。その他の案件も含めて、弱体化の進む野田政権の間隙を突いた面も大きい。知日派として名高い、李明博大統領の兄・李相得議員が逮捕・起訴されるなど、日韓関係のパイプが細くなっているなどの面もある。

  韓国側の様々な事情はさておき、今回の竹島訪問強行を許した、野田政権の外交政策に大きな問題がある。韓国側とのパイプを太く保っておけば、李明博大統領に自制を促し、竹島訪問強行もなかったはずだ。もっとも、野田政権の外交政策に対する失点を強調するだけでは、この問題の本質を見誤る。

 

 日本では、尖閣諸島・北方4島でも、領有権紛争が取り沙汰される。尖閣諸島について日本政府は領有権問題の存在を否定するので、領有権紛争が取り沙汰される、との表現にする。 

 尖閣諸島石垣島のすぐ北に位置し、日本の領土であることは明らかで、中国の主張は妄言でしかない。北方4島では、普通に生活を営んでいた日本人が旧ソ連による侵略を受けた。日本国内ではこのように捉えられることもあり、尖閣諸島や北方4島についての日本国民の関心は一定程度あると考えられる。

  これに対して、竹島隠岐の島のすぐ側に位置するわけでもなく、日本人の普通の生活が侵略を受けたという事実もない。ただ単に領有権紛争の対象となっているだけだ。尖閣諸島や北方4島に比べて、日本人の関心は低い。「独島は韓国固有の領土」と徹底的に教育された、韓国国民とは比較にならない。

 

 日本政府の対応の拙さも国民の関心の低さに起因するのではないか。竹島問題の外交政策の失策が政権基盤の大きな失点につながらないのだから。

 竹島問題では、韓国政府の対応や日本の外交政策の失策を嘆くより、まずは日本国民が大きな関心を抱くことから始めるべきだ。そうでない限り、領有権紛争による感情対立を、永遠に繰り返すだけになりかねない。

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

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